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多摩市

市民とのコミュニケーションを促進するための業務改革

開発から50年が経過する多摩ニュータウンを抱える東京都多摩市では、公共施設の老朽化と今後増加する市民の高齢化が大きな課題となっている。また、社会の構造変化により従来の行政・市民サービスへ求められる要件が変化してきている。そこで多摩市では、複雑化するニーズに対応していくため、業務を効率化し行政・市民へのサービスの再構築を目指している。その取り組みの中で、RPAを活用した業務改革に踏み出した。ここでは多摩市の取り組みについて紹介する。

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【課題】

売手市場がもたらす採用難と変化が求められる行政サービスへの対応

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多摩市
企画政策部 行政管理課
公民連携係長
田中 宜久 氏

東京都心から電車で約30分のところに位置する多摩市は、緑あふれる豊かな自然と都心へのアクセスの良さから日本でも有数のベッドタウンとして知られている。その背景には昭和40年代の高度経済成長期、都市部に大量の労働者が流入し深刻な住宅難が問題となり、アクセスのよい郊外として大規模団地を中心とした多摩ニュータウンが開発された。初期入居から約50年が経過しており、住宅、公共施設、インフラ等の更新問題とともに住民の高齢化が大きな課題となってきている。そこには、「老年人口の増加による社会保障費の増大」、「多様化する市民のニーズへの対応や施設の老朽化対策」、さらにはこれらの喫緊の課題に対応するための「人材の確保」が必要となっている。しかし、生産年齢人口の減少によって人材の売手市場に拍車がかかり、かつては「安定して地元に貢献できる職業」として人気のあった地方自治体においても、今後の採用難が予測されている。また、ピークが集中する市民からの申請業務など、特定の時期に膨大な量の定型業務が発生する自治体では、繁忙期に突出する職員の残業時間を減らし、年間を通じて作業量を平準化し業務量に合わせた適切な人員の配置をする必要があった。

このような背景に加えて多摩市では、「より良い行政、暮らしやすいまちづくりを目的に、市民目線での意見を行政運営に取り入れるためのワークショップに積極的に取り組んでいる。今後も一層、市民と対話の機会を創出する業務へ注力していく必要がある」と行政が注力する領域の変化について、多摩市 企画政策部 行政管理課 公民連携係長 田中 宜久氏は説明する。

【ソリューション】

マルチベンダー対応をはじめ、総合点でUiPathを採用

多摩市では、かねてより既存の業務の構造を抜本的に見直すBPR(Business Process Re-Engineering)の方法を模索していた。しかし、BPRを進めていく上で、ICTを効率的に活用しないと解決が難しそうな業務も数多く存在したという。そうした状況の中で、茨城県におけるRPAの導入事例を見たときに多摩市でも活用できそうだと考えたという。(田中氏)また、本格導入にあたっては、総務省が推進する「AI・RPA等の革新的ビッグデータ処理技術」の活用をして地方の人材不足を補い、地域課題の解決・住民サービスの向上を目的とする「革新的ビッグデータ処理技術導入推進事業」も後押しとなり、RPAの導入に踏み切った。

RPAの検討を進めるうえで、製品選定が行われていった。RPA製品の選定のポイントについて、田中氏は次のように説明する。「多摩市では、約120のシステムが稼働しており、各システム、アプリケーションに対応できる汎用性を重視しました。UiPathは、様々なシステムやマルチベンダーに対応しており、グローバルでの豊富な実績もあることから安心感がありました」と語る。また、日本でのサポート体制の充実、懸念されていたユーザーインターフェイスの日本語化への対応、情報量の豊富さ、UiPathアカデミーのE-Learningによる教育など、総合的に判断したと田中氏は続けて説明した。

製品選定の次に検討されたのは、RPA化する対象業務と進め方だ。2019年1月に開催されたUiPath Forwardでは数多くのユースケースを見ることができ、参考になったと田中氏は説明する。そのユースケースには多くの場合、次の2つの方法に分類されるという。1つ目は、全体に説明会を行い、RPAの対象業務を公募する方法、もう1つは、特定の業務をもっている部署を指名し、成功事例を作ってから全体に展開する方法だ。多摩市ではその業務特性、逼迫する職員のリソースから、後者の特定部署で成功体験を作る方法での展開が検討された。また、対象業務についても推進する行政管理課のメンバーが経験したことのある業務、技術的にも異なる業務をRPAの対象業務として選定していった。

【導入効果】

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多摩市
企画政策部 行政管理課
公民連携係
志波 純平 氏

RPAとAI-OCR連携の実現と3業務で50%の時間削減

多摩市では2019年3月~7月までRPAの実証実験が行われた。その中で横展開可能で、技術的にも異なる次の3つの業務を実証実験の対象とした。

①法人住民税 法人設立届出書入力業務
この業務は、RPAとAI-OCRの連携を目的とした実証実験である。法人設立に関しては、届出書に関する必要項目は定められているものの、必要項目はパソコンで入力して、印刷したものが送られてくるため、アプリケーション、バージョン、プリンタ設定により、出力する場所が異なる。そこでAI-OCRと連携することにより、様式が統一されていない準定型様式でも項目名のユレ、印字位置のユレをAI-OCRで認識し、目的の情報をRPAでデータ化できることを確認した。

②児童手当 所得異動入力業務
自治体では、情報セキュリティを目的に(住基ネット、LGWAN、インターネット)の3つのネットワークに分離されている。しかし、業務によっては3つパソコンを並べて入力業務を行う必要があり、システム化を検討したが多額の費用がかかるため導入を断念した。そこでシステム間を橋渡しする入力業務として、RPAを活用した。これにより、手入力していた作業が自動化されることにより、入力ミスの不安解消、作業時間短縮へと繋がった。

③保育園入所申請書入力業務
この業務は年間1,240件にも及ぶ業務量の多い作業の1つである。また件数もさることながら、1件当たりの入力項目が多い手書きの申請書を業務システムへ入力していたため、作業負荷もかなり高い。そして、特定の時期に大量の作業が発生するため、少しでもピークを減らし残業を削減できるよう、RPAの対象事例となった。また手書きの申請書もOCRを活用して、読み込みから入力までを同時に行えるようにすることで入力時間を短縮し、申し込みを行った市民に対して早期の通知が可能になる見込みだ。

この実証実験では技術的な評価を主眼に行われたが、削減率という面でも50%もの削減効果ができたという。また全体を通して当初の目的であった「業務の効率化」、「正確性の向上」、「時間外勤務の削減」が確認できたと同時に、RPA化する中で申請書の様式変更や手順変更をすることで、業務の見直し(BPR)も行うことができたとプロジェクトの取りまとめを担当した多摩市 企画政策部 行政管理課 公民連携係 志波 純平氏は説明する。

【今後の展望】

全庁展開とエバンジェリストの育成

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多摩市
企画政策部 行政管理課
公民連携係
谷 真里子 氏

実証実験を経ていよいよ2019年9月よりRPAの本格導入を開始する。今後の展開方法について、多摩市では作業時間の多い上位20%の業務を外部のインテグレーターとともに、早期に削減時間に関する導入効果と効率化を図る考えだ。またそれ以外の業務は職員に依存している業務が多いため、内製化によって庁内に展開していくという。内製化に向けては、エバンジェリストの養成トレーニングを2019年下期に計画しており、各部署にエバンジェリストというRPAに精通した職員を養成することで、庁内でのRPA導入を活性化させる狙いだ。また異動の比較的多い市役所では、エバンジェリストが異動することもあり、異動先でまたRPAを推進する役割も担っていると多摩市 企画政策部 行政管理課 公民連携係 谷 真里子氏は語る。

今後RPAが増えていくにつれ、RPAを管理していくツールも必要になるので「UiPath Orchestrator」の導入も検討していきたいと全庁展開について余念がない。全庁にわたる行政業務の効率化により、今後の多摩市での市民サービスの対応はさらに充実していくであろう。

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お客様情報

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多摩市

http://www.city.tama.lg.jp/

所在地:東京都多摩市関戸6-12-1

主な業種: 公務

お客様概要東京都多摩市は、都心からのアクセスの良さと緑豊かな自然があふれる日本有数のベッドタウン、多摩ニュータウンをもつ住宅街である。「みんなが笑顔 いのちにぎわうまち 多摩」を掲げ、住民視点の風通しのよい行政、市民が主役の市政、まちづくりに取り組んでいる

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