トライアルの開始

導入事例:ポリプラスチックス株式会社 業種:製造業

UiPathを活用したRPA化の推進で
従業員一人ひとりの生産性を向上

エンジニアリングプラスチック製品の供給を通じて製造業各社を支えるポリプラスチックスでは、事業拡大に応じたビジネス競争力の維持・強化を目指す中で、従業員一人ひとりの生産性向上が重要なテーマに。同社ではRPAを導入して、経理部門をはじめとするバックオフィス業務の自動化を推進することで大幅な工数削減を実現している。

CHALLENGE事業が拡大を遂げる中で従業員の生産性をいかに向上させるか

1962年に日本初のエンジニアリングプラスチック(エンプラ)専業メーカーとして創業したポリプラスチックス株式会社。同社の生み出すポリアセタール(POM)や液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)といった素材は、自動車やパソコン、携帯電話など、我々の身の回りにある様々な製品の部品材料として幅広く利用されている。特にPOMとLCPの供給に関しては世界でもトップシェアを誇る。

同社では2014年頃から、そうしたビジネス競争力の維持、強化に向けた礎を固めるべく、例えば販管費の削減や会議の効率化などのテーマに応じて、各領域での改革に集中的に取り組むプロジェクトを順次推進してきた。

特に2012~13年頃に同社では、それまで主体としていたアジア市場から、欧米市場にもビジネスを拡大。そうした動きに対し、一気に人的リソースを増強するという対応はやはり困難であり、従業員一人ひとりの生産性をいかに向上させていくかが同社にとっての重要課題として浮上。年々、切迫感が高まってきていた。

同社では、2018年8月に「業務合理化チーム」を設置。課題解決に向けた組織的な取組みを開始する。業務合理化チームでは、各メンバーが各種セミナーに出向いたり、新聞、雑誌などで役立ちそうな記事に当たったりといった活動を続けながら、従業員の生産性向上に向けた方策を模索した。そうした中で、同社が出会ったのがRPAという技術だった。

「当社には、例えば基幹システムなどから必要なデータを収集して、それをMicrosoft社のExcel(以下 Excel)に投入して加工し、分析・レポーティングを行うという業務が多くあります。そうした作業が自動化できれば大幅な効率化につながることは明らかです。その点でRPAが当社の業務には非常に適していると考えました」と経営企画室 主席部員の林雄一郎氏は語る。

SOLUTION候補となった製品を実際に使って検証し自社に最適なRPAを選定

RPAの導入を検討する中で、ポリプラスチックスでは社内で説明会を実施。現場部門に対してRPAの適用により効果が望める業務を募った。結果、75の業務が候補としてあがったという。それを受けて同社では、早速、製品選定に入った。

製品選定の具体的なアプローチとしては、市場に投入されているRPA製品の中から、自社のニーズを満たし得ると考えられる3つの製品に候補を絞り、先程の75の業務のうち5つの業務をターゲットに実際にワークフローを作成して機能実証を実施した。業務合理化チームと該当する業務の現場担当者が、開発されたロボットの動作や処理の結果を検証するという方法をとった。

そうした検証を経て、同社が最終的に導入を決めたのがUiPathだった。

「例えば、他社の製品では最初のとっつきやすさはあるものの、複雑な処理を行おうとすると画像認識に頼らなければならず、性能面で難が生じたり、そもそもロボットの開発自体が煩雑だったりなど、当社のニーズに照らし合わせるとデメリットといえる点がありました。それに対し、UiPathではそうした問題もクリアされており、さらにExcelとの間に高い親和性を持っているというメリットがありました」と呉地一幸氏はUiPathを選定したポイントを説明する。

開発環境であるUiPath Studioでは、自動化設計モジュールであるアクティビティを選んでつなぎ合わせる直感的な操作でワークフローを作成できるため、高度なプログラミング知識を必要としないことが特徴としてあげられる。

また一方で、同社が今後に向けて念頭に置いている海外拠点への展開という観点でも、グローバル規模でのサポート体制に定評のあるUiPathには大きな安心感があった。加えて、同社の海外拠点の中には、基幹システムの一部にSAP ERPを利用しているところもあり、SAPからのデータ抽出等の処理が円滑で、同システムと連携した自動化を開発するための部品が充実している点もUiPathの重要なアドバンテージであると評価した。

UiPathの導入決定後、ポリプラスチックスではロボット開発を行うためのプロジェクトを立ち上げた。「社内からプロジェクトに招集されたメンバーは、これまでExcelのマクロやVBAなどを使ったことがあるというレベルで、いずれも決して専門的なスキルを持ち合わせているというわけではありませんでした。そうした陣容で、あるメンバーが開発したロボットを、他のメンバーが確実に改修、メンテナンスしていけるような体制を目指しました」と呉地氏は紹介する。

BENEFITRPA化で創出された時間を使って従来手が回らなかった業務に着手

そうした体制のもと、同社では取組みの初年度となった2019年度に、主としてバックオフィスの定型業務のRPA化を推進。あわせて53のロボットの実装が開発チームによって行われた。例えば、経理部門であれば、会計報告を行うため準備資料の作成に、所定のシステムから必要なデータをダウンロードして、それをExcelに投入して加工するという作業を、12~13社ある同社の海外現地法人の数だけ実施するといった作業を毎月実施していたが、そうした負荷の高い定型作業をRPAにより自動化した。その結果、全社で年間にしてトータル3,700時間程度の削減を実現。さらにUiPath の導入後、RPAを適用した業務部門の残業時間が確実に削減されるという効果も得られているという。

一方、現場の担当者からもRPAの適用は好評をもって迎えられている。「現場へのヒアリングなども適宜実施していますが、中にはこれまで1時間を要していた作業が1分程度で終わるようになったという話もありました。作業負担の軽減はもちろん大きな成果ですが、RPAによって削減された作業時間を、これまで忙しくて着手できなかった、例えば分析業務や報告書の精度を上げるための検討に費やすことができるようになったという声が多く寄せられていることも非常に印象的です」とICT企画統括部の呉地 一幸氏は紹介する。

RPA化の取組みを通じて気づいたのは、現状の業務をそのまま実装すると属人性が持ち込まれ、ロボットが複雑化してしまうということ。つまり、事前に適用する業務をきちんと整理することが肝要なのです。

ポリプラスチックス株式会社 経営戦略本部 経営企画室主席部員 林 雄一郎 氏

NEXTRPA化の取組みはBPRの観点からもビジネスに寄与する

ここまで経理部門をはじめとするバックオフィス業務にRPAを適用してきたポリプラスチックスだが、取組み2年目となる2020年度には物流関係の部門、あるいは工場の業務においても、積極的にRPA化を推進していく構えだ。さらに、研究開発業務へも適用を広げ、余力があれば海外拠点への展開にも着手していきたいとしている。

「ここまでのRPA化の取組みを通じて、我々が気づきとして得たのは、現状の業務をそのまま実装すると、そこに属人性が持ち込まれたりして、ロボットが複雑化してしまうということ。つまり、事前に適用する業務をきちんと整理することが肝要なのです。そうした意味で、今後RPA 化の取組みは、BPR(Business Process Re-engineering)という観点からも当社ビジネスに寄与していくことになるものと考えています」と林氏は語る。

The Results

  • 3,700 RPAの導入で年間 約3,700時間の業務削減
  • 1 1時間を要していた作業が1分程度で終わるように
  • 創造的業務 着手できていなかった創造的業務に着手可能に
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